ADP雇用統計(ADP全米雇用報告)は、米国の給与計算大手ADPが毎月出している「民間企業で働く人が何人増えたか」の数字です。雇用統計の2日前に出るので、ドル円を触っている人なら一度は名前を見たことがあると思います。
このページは、発表のたびに数字を書き換えていく「随時更新」の記事です。最新の結果、13ヶ月の推移、業種別の中身、そして雇用統計とどれくらいズレるのかを、兼業トレーダーの僕が見ているポイントと一緒にまとめていきます。
最終更新:2026年10月4日(2026年9月分を反映)
※数字は発表後に改定されることがあります。各表の対象月と出典もあわせて確認してください。
結論:9月は+9.0万人で予想超え。ただし3ヶ月平均では横ばい

2026年9月分のADP雇用統計は +9.0万人。市場予想(ロイター調査で+7.0万人)を上回り、3ヶ月続いた伸びの鈍化に一度ブレーキがかかりました。
ただ、3ヶ月平均で見ると +5.7万人(2026年7〜9月) で、その前の3ヶ月(6〜8月)の+5.8万人とほぼ同じです。春(4〜6月)の+10.7万人と比べると、まだ半分ほどの勢いしかありません。
さらに2日後の雇用統計(BLS)は +2.9万人 と弱く、ADPの「強さ」は本番では確認されませんでした。

ADPが強くても、それだけで「米雇用が復活した」とは言えません。単月の+9.0万人より、3ヶ月平均がまだ低いところに目を向けておきたいです。
最新の結果(2026年9月分)
| 項目 | 結果 | 予想 | 前回 |
|---|---|---|---|
| ADP民間雇用者数(前月差) | +9.0万人 | +7.0万人(ロイター)/+6.8万人(ダウ・ジョーンズ) | +3.6万人(初値+3.8万人から下方改定) |
| 財(モノ)部門 | +3.1万人 | — | — |
| サービス部門 | +5.9万人 | — | — |
| 基本給の伸び(全体・前年比) | 3.2% | — | — |
| 基本給の伸び(転職しない人) | 3.0% | — | — |
| 基本給の伸び(転職した人) | 4.8% | — | — |
| 総支給額の伸び(全体・前年比) | 4.7% | — | — |
- 発表日時:2026年9月30日(水)米東部8:15(日本時間21:15)
- 対象:2026年9月分(季節調整済み)
- 今回からBLSの四半期雇用賃金統計(QCEW)の2026年1〜3月分を取り込んでいます。そのため過去の月も少し書き換わっています(下の推移表を参照)
出典:ADP National Employment Report(ADP, Inc.)、ADP Pay Insights。市場予想はロイター、ダウ・ジョーンズの各調査(報道ベース)。
発表直後のドル円

| 項目 | 価格 |
|---|---|
| 発表直前(21:14) | 156.988 |
| 15分間の高値 | 157.087 |
| 15分間の安値 | 156.928 |
| 15分後(21:30) | 156.928 |
13ヶ月の推移(ADPと雇用統計の比較)
単位:千人(前月差・季節調整済み)。ADPは民間だけ、雇用統計(非農業部門雇用者数)は政府も含む数字です。
| 対象月 | ADP | ADP 3ヶ月平均 | ADP初値(改定前) | 雇用統計 | 向きは同じか |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年9月 | +88 | — | — | +76 | 同じ |
| 2025年10月 | +20 | — | — | −140 | 逆 |
| 2025年11月 | +74 | +60.7 | — | +41 | 同じ |
| 2025年12月 | +37 | +43.7 | — | −17 | 逆 |
| 2026年1月 | +11 | +40.7 | — | +160 | 同じ |
| 2026年2月 | +66 | +38.0 | — | −156 | 逆 |
| 2026年3月 | +61 | +46.0 | — | +214 | 同じ |
| 2026年4月 | +105 | +77.3 | — | +148 | 同じ |
| 2026年5月 | +122 | +96.0 | — | +63 | 同じ |
| 2026年6月 | +95(改定) | +107.3 | +98 | +31 | 同じ |
| 2026年7月 | +44 | +87.0 | +44 | −10 | 逆 |
| 2026年8月 | +36(改定) | +58.3 | +38 | +133 | 同じ |
| 2026年9月 | +90 | +56.7 | +90 | +29 | 同じ |
- 13ヶ月のうち4ヶ月は、ADPと雇用統計でプラス・マイナスの向きそのものが逆でした
- 2025年10月は政府閉鎖があった月で、雇用統計の失業率はこの月だけ存在しません
- ADPの初値は、各月の発表文に載った数字です(2026年5月以前は未記載)
出典:ADP National Employment Report(ADP, Inc.)、FRED(ADPMNUSNERSA・PAYEMS)。3ヶ月平均はちきトレ計算。2026年10月4日時点の値。
中身:業種別・規模別・地域別

業種別(2026年9月分・千人)
| 業種 | 9月 | 8月 | 7月 |
|---|---|---|---|
| 教育・医療 | +55 | +42 | +36 |
| レジャー・宿泊 | +22 | +18 | −11 |
| 製造 | +17 | −15 | +2 |
| 建設 | +15 | +10 | +1 |
| その他サービス | +6 | +5 | +6 |
| 情報 | +3 | −4 | +5 |
| 貿易・輸送・公益 | 0 | −7 | −8 |
| 天然資源・鉱業 | −1 | −5 | −6 |
| 専門・ビジネスサービス | −11 | −15 | +9 |
| 金融活動 | −16 | +7 | +10 |
9月の増加分(+90)のうち、教育・医療だけで+55と6割を占めています。教育・医療は景気にあまり左右されない業種で、13ヶ月ずっとプラスです。一方で、景気の影響を受けやすい専門・ビジネスサービスは3ヶ月のうち2ヶ月がマイナスでした。
企業規模別(2026年9月分・千人)
| 規模 | 9月 | 8月 |
|---|---|---|
| 1〜19人 | +18 | +22 |
| 20〜49人 | +5 | −14 |
| 50〜249人 | +18 | −3 |
| 250〜499人 | +36 | −5 |
| 500人以上 | +14 | +34 |
地域別(2026年9月分・千人)
北東部が+56と大きく、中西部+5、南部+11、西部+17でした。北東部の中では中部大西洋(ニューヨーク周辺)が+47です。
出典:ADP National Employment Report(ADP, Inc.)。各月の数字はFRED配信のADP系列(ADPMINDEDHLTNERSAほか)を千人に換算。
雇用統計(BLS)との違い
| 項目 | ADP雇用統計 | 雇用統計(BLS) |
|---|---|---|
| 作っている人 | 民間企業ADP(スタンフォード大学のデジタル経済ラボと共同) | 米労働統計局(政府) |
| 数え方 | ADPの給与計算データ(約2,600万人分) | 企業・政府機関へのアンケート調査 |
| 範囲 | 民間だけ | 民間+政府 |
| 発表 | 雇用統計の2日前の水曜日 | 原則第1金曜日 |
| 失業率 | 無い | ある(家計調査) |
たとえるなら、ADPは「塾の模試」、雇用統計は「本番の入試」です。ただし出題範囲が違います。模試(ADP)は民間の科目だけ、本番(雇用統計)は政府の科目まで入っています。模試の点が良くても本番で崩れることはあるし、そもそも範囲が違うので点数がぴったり合うことはまずありません。
実際、2026年9月分はADPが+9.0万人だったのに、雇用統計は+2.9万人でした。ADP自身も「雇用統計を予測するための数字ではない」としています。
2026年9月分の雇用統計(2026年10月2日発表)
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 非農業部門雇用者数(前月差) | +2.9万人 |
| 失業率 | 4.2%(前月4.1%) |
| 平均時給(前月比/前年比) | +0.1%/+3.0% |
| 前2ヶ月の改定 | 7月 +2.1万→−1.0万、8月 +16.2万→+13.3万(合計−6.0万人) |
出典:米労働統計局(BLS)「The Employment Situation」2026年9月分。
賃金も見比べておくと、ADPの「転職しない人の基本給」は+3.0%、雇用統計の平均時給は前年比+3.0%で、9月はほぼ同じ水準でした。
雇用統計のくわしい中身は、雇用統計の最新結果と推移の記事でまとめています。
基調:3ヶ月平均で見る
単月のADPは振れが大きいので、僕は3ヶ月平均で向きを見ています。
| 期間 | ADP 3ヶ月平均 |
|---|---|
| 2026年1〜3月 | +4.6万人 |
| 2026年4〜6月 | +10.7万人 |
| 2026年5〜7月 | +8.7万人 |
| 2026年6〜8月 | +5.8万人 |
| 2026年7〜9月 | +5.7万人 |
春に一度+10万人台まで上がったあと、3ヶ月かけて半分ほどに落ち、9月は下げ止まった形です。9月の+9.0万人が10月以降も続けば3ヶ月平均は持ち直しますが、単月だけでは「流れが変わった」とは言えません。
関連する景気の数字
| 指標 | 最新 | 対象期間 | 見方 |
|---|---|---|---|
| 失業率 | 4.2% | 2026年9月 | 3月以降4.1〜4.3%の狭い範囲 |
| 新規失業保険申請件数 | 19.7万件 | 2026年9月26日の週 | 20万件前後の低い水準が続く |
| JOLTS 求人件数 | 707.9万件 | 2026年8月 | 前月733.5万件から減少 |
| JOLTS 自発的離職率 | 1.9% | 2026年8月 | 「辞めても次がある」と思う人の割合 |
| JOLTS レイオフ率 | 1.0% | 2026年8月 | 企業側の人減らし |
自発的離職率が低めで、レイオフ率も低い。つまり「企業はあまりクビにしないけど、新しくも採らない」「働く人も転職に慎重」という状態です。ADPで教育・医療だけが伸び、景気に敏感な業種が弱いのと話が合っています。
出典:FRED(UNRATE・ICSA・JTSJOL・JTSQUR・JTSLDR)、米労働統計局(BLS)。
市場とFRB
FRBの政策金利(FF金利誘導目標の上限)は 4.00%(2026年10月3日時点)で、2026年9月に3.75%から引き上げられています。物価の面では、コアPCEデフレータが前年比3.01%(2026年8月)と2%目標を上回ったままです。
物価が高い中で利上げをしているFRBにとって、雇用の数字は「引き締めが効きすぎていないか」を確かめる材料です。ADPや雇用統計が弱い月が続けば、追加の引き締めに慎重な声が強まりやすく、逆に雇用が持ち直せば物価を優先する声が通りやすくなります。
FRBメンバー一人ひとりの姿勢は、FRBメンバーのタカ派・ハト派一覧で追いかけています。
出典:FRED(DFEDTARU・PCEPILFE)。
次回の発表で見るポイント
次回(2026年10月分)は 2026年11月4日(水)米東部8:15(日本時間22:15) の発表予定です。米国が冬時間に変わるので、今回より1時間遅くなります。
- 3ヶ月平均が戻るか:10月も+9万人前後なら3ヶ月平均(8〜10月)は+7万人台に上がります。逆に+4万人を割るようなら、9月はただの反動だった可能性が高くなります
- 教育・医療以外が増えているか:専門・ビジネスサービスや金融がプラスに戻るかどうか
- 転職した人の賃金:転職した人の基本給の伸び(9月4.8%)が下がってくると、人手不足が和らいでいるサインです
- 雇用統計(11月6日)との差:今回のように大きく離れた場合、ドル円はADPより雇用統計の方を素直に織り込みます
ADPは毎週火曜日に「NER Pulse」という週次の速報値(4週移動平均)も出しています。月次の発表前に流れをつかむのに使えます。
ADP雇用統計の基礎
- 正式名称:ADP National Employment Report(ADP全米雇用報告)
- 作成:ADP Research(スタンフォード大学デジタル経済ラボと共同)
- 元データ:ADPが給与計算を請け負っている企業の、匿名化された週次の給与データ(約2,600万人分)
- 発表:毎月、雇用統計の2日前の水曜日・米東部8:15(日本時間 夏21:15/冬22:15)
- 改定:翌月の発表で前月分が改定されます。QCEW(BLSの四半期雇用賃金統計)を取り込むタイミングでは、さらに前の月まで書き換わることがあります
- 賃金データ:Pay Insightsとして、同じ人の12ヶ月前との比較で基本給・総支給額の伸びを出しています(転職しない人と転職した人を分けている点が特徴)
トレーダーとしての使い方
僕のADPの使い方はシンプルで、「ADP単体でポジションを作らない」です。
- 発表直後の値動きは追いかけない:ADPの予想との差で一瞬動いても、2日後の雇用統計で上書きされることが多いです。2026年9月分は、ADPが予想を上回ったのに雇用統計は予想(報道ベースで+8万〜9万人程度)を大きく下回りました
- 予想との差より、3ヶ月平均の向きを見る:単月のサプライズはノイズになりやすいので、トレンドの確認に使います
- 雇用統計の前に、自分のシナリオを2本用意する:「ADPどおり強い」「ADPと逆に弱い」の両方で、ドル円がどこまで動いたらどうするかを決めておきます
- 賃金は物価の話につながる:転職した人の賃金の伸びが高いままだと、FRBは物価に神経質になりやすい。ドル円の金利差の話とつなげて見ます

模試の点だけで志望校を決めないのと同じで、ADPは「本番前の予習」くらいの扱いにしています。
更新履歴
| 更新日 | 反映した月 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年10月4日 | 2026年9月分 | 記事を公開(+9.0万人、予想+7.0万人) |
よくある質問
ADP雇用統計とは何ですか?
米国の給与計算大手ADPが、自社の給与データ(約2,600万人分)をもとに、民間企業で働く人が前月から何人増えたかを毎月発表する指標です。正式名称はADP National Employment Reportで、雇用統計の2日前の水曜日に発表されます。
ADP雇用統計は日本時間の何時に発表されますか?
米東部時間の8:15に発表されます。日本時間では、米国が夏時間の時期は21:15、冬時間の時期は22:15です。2026年10月分は2026年11月4日(水)の日本時間22:15に発表予定です。
ADP雇用統計と雇用統計(BLS)の違いは何ですか?
ADPは民間企業の給与データから民間の雇用だけを数えます。雇用統計は米労働統計局が企業や政府機関へのアンケートで集計し、政府の雇用や失業率も含みます。数え方も範囲も違うので、数字が一致することはほとんどありません。
ADP雇用統計で雇用統計の結果は予想できますか?
当たらないことが多いです。2025年9月〜2026年9月の13ヶ月のうち4ヶ月は、プラスとマイナスの向きそのものが逆でした。ADP自身も雇用統計を予測するための数字ではないとしています。
2026年9月分のADP雇用統計の結果は?
民間雇用者数は前月から9.0万人増え、市場予想の7.0万人(ロイター調査)を上回りました。8月分は3.8万人から3.6万人に下方改定されています。基本給の伸びは前年比3.2%でした。
まとめ
- 2026年9月分のADP雇用統計は+9.0万人で、予想の+7.0万人を上回った
- ただし3ヶ月平均は+5.7万人で、6〜8月の+5.8万人とほぼ同じ。春の+10.7万人の半分ほど
- 増加の6割は教育・医療。景気に敏感な専門・ビジネスサービスと金融はマイナス
- 2日後の雇用統計は+2.9万人で、ADPの強さは確認されなかった
- 次回は2026年11月4日(水)日本時間22:15。3ヶ月平均が戻るか、教育・医療以外が増えるかを見る
次の発表のあとに、またこのページを更新します。

